"人が足りない" は問題ではない

とある悩めるマネジャーへ。

"人が足りない" は問題ではない。

「いや〜、人が足りないのは問題でしょう?」と思うだろう? 実は違うのだ。少し表現を変えて、"人が足りないことを問題と考えてはならない" とすればどうだろうか?

まず、状況を正しく認識しよう。起こっている事象は "やらなきゃならない (と思い込んでいる) ことと、そのために必要な人員数 (処理能力) が一致していない" ということ。

「ええ。だから人が足りないんです。」と思うかもしれないが、ちょっと逆から考えてみよう。"人を増やせば問題は解決する" という命題を設定してみる。すぐに人は増やせるだろうか? その人はすぐに生産性を発揮するだろうか? そして問題は解決するだろうか?

募集広告を出して、面接して、教育するのに時間がかかるだろうし、これまで似たような事象は何度も繰り返されてきたことから考えて、今後も何度も同じ状況に陥るのではないかな? もし、すぐに増員できて、その人はすぐに生産性を発揮し、発生している事象が解消すると信じるなら…。それでいい。この先を読む必要はない。

人をすぐに増やすことができない、増やしてもすぐには機能しない、機能したとしても相変わらず事象は続く、そもそもそんな予算は捻出できない。などなど…であれば、起こっている事象についての問題設定を間違えている。人を増やすことは簡単ではないし、問題は解決しないということなので、最初の命題は成立せず、"人が足りない" は不適切な問題設定だったということになる。帰納法的な考え方だね。

さて、今、東京にいるとする。3 時間後に大阪 (だいたい 500Km) に用事があるのだが、持っている車は最高時速 100km/h しか出ない。単純計算で 5 時間かかるが、さて、どうするか?

"人が足りない" というのは、この設定の時に、速い車に買い替えるとか、車をチューンナップするとか、そーゆーところに縛られた考え方なんぢゃないかな? 車を買い替えるのもチューンナップするのも、それなりに時間がかかる (それに法廷速度というものが…)。従って通常は、電話で用事を済ませられないか? 日付を遅らせられないか? などと考えるハズだ。

実は、"人が足りない" というのは、問題ではなく制約なのだ。限られた人数の中で、どうやって事象を解消するか? と考えるのが、望ましい脳の活用方法だ。人を増やすことよりも、期日を変更するとか、やることを変えたり、減らしたりする方が、はるかに volatility が高い (簡単に変更できる)。

「言ってることはわかります。でも、上から降ってくるんで、下っ端の僕らにはどーすることもできないんです。」と思うかな? …ふむ…。どうやら、本当の問題はこっちのようだ。"人が足りない" のは簡単には解決しない、費用対効果 (脳の活動総量に見合った成果は得られない) の悪い問題設定だけど、こっちなら十分に解決可能で、解決する価値のある (あるいは解決しなければならない) 問題設定だ。

ここまで合意できるなら…

おめでとう。偽りの問題の陰に隠れていた本当の問題に、一歩近付いたよ。