「クラウド・ビジネス」入門
「クラウド世界を俯瞰する一冊。ビジネスの入門書ってことではない。」
これを読んでクラウドビジネスができるようになったりするようなモノではないのだが、まあ、最初に全体を俯瞰するのは、入門と言えば、入門か…。会社に入って、最初に会社の全体像をざーっと教わるのは、一般的だしね。しかしまあ、「オバマ新大統領はすでに使っている!」とかって帯に書いてあるんだけど、売るためとはいえ、こーゆー煽りはどーも好きになれないなぁ…。
さて、クラウド。Gmail が普及するにつれ、この流れは止まらない "未来の形" だとは思っていたのだが、「また、新しいバズワードかぁ〜」と思って、少し前まで遠目に見ていた。流れが一気に加速すると思ったのは、SalesForce.com を知ってから。
で、これまでにどんなことがあって、今はどーなっているのか、この先どーなってゆくのかを自分の中に作り上げるために、手にしたのが本書って訳だ。
かつて、ダウンサイジングってゆー言葉があった。基幹業務が、メインフレームから、今のようなサーバーとパソコンに置き換わってゆき、仕事のやり方が大幅に変わった。プログラマークライシスなーんて言葉もあり、IT 技術者の不足が心配されていたのだけれども…。
クラウドのインパクトも、ダウンサイジングと同じぐらい世の中を激変させるだろう。仕事のやり方が劇的に変わり、今度は IT 技術者淘汰の方向へ向かう。例えば、Google Apps とゆーサービス。これを使えばメールサーバーをセットアップしたり保守したり…なんて必要はなくなる。jimdo を使えば、企業サイトの構築やお守りに技術者はいらない。NetSuite とは基幹業務を一式提供する。さて、IT 技術者はいったい何をすればいいのさ?
加えて、少子高齢化、人口減少、世界的リセッションと、経済縮小の圧力もある。企業各社は「選択と集中」を合い言葉に、本業ではないないシステム投資を縮小することになる。そして、かろうじて確保したシステム系の予算は、クラウド企業へと流れてゆくことになる。従来型の仕事をこなして、漫然と日々を暮らしていたら、飯の種が無くなるかもしれない…な。
技術を持った人が溢れるってゆー現象は、俯瞰してみれば、新しいモノを生み出す方向への "見えざる手" による圧力でもある。溢れた人たちはモノを作る技術はあるのだから、後はきっかけさえあれば、何かを生み出すことはできるのだから。
勝間和代氏の "BOOK LOVERS" ってゆー Podcast がある。
その中で、彼女が印象深いことを言っていた。「今は、リスクを取る自由のある、素晴らし時代」なのだと。日々、仕事に追われている IT 技術者の方々は、少しだけ暇を作って、ぜひ、本書を一読されたい。自分の目で見て、歩く道を自分で決めた方がいい。"リスクを取る自由" をその手に。
- 作者: 林雅之
- 出版社/メーカー: 創元社
- 発売日: 2009/02/21
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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うーん…。あと 5 年…いや、3 年もすれば、IT 業界もずいぶんと "景色" が変わるだろうなぁ…。