数字を見るとおなかが痛くなる社長のための決算書の読み方

「本屋で、うさんくさい表紙を見て躊躇したけれど、読んで良かった決算書の入門書だ。」
ここ数ヶ月、決算書 (財務諸表) とのにらめっこが続いている。きっかけは自社で大きなイベントが起こり、その結果として決算書がどうなるのか知りたかったからだ。…が、何人かに相談する毎に「過去 3 年間の決算書を見た方がいいよ。」「同業他社のを見比べないことには、なんとも言えないなぁ…。」「設立当初はどうだったんだろうね?」などと言われ、結局、設立時からの時系列決算書を作ってみたり、他社の時系列決算書を作って眺めてみたりする日々を送っていた。

手元にある "「1秒!」で財務諸表を読む方法" を片手に、流動率がどうなってるか、労働分配率は妥当なのか? なーんてことを見つつ、少しずつ勘定科目に慣れ、ただの数字の羅列が会社の移り変わりに見えるようになってきたような気はする。…が、中小企業の決算書なんて、基準に揺れがあるし、できるだけ税金を安く済ませたい気持ちや、少しでも銀行の心証を良くしたい気持ちが入っていたりもするから、単純に並べて見ているだけでは、やっぱりよく分からない。会計の素人だから、勘定科目の細かいところがよく分からないってのも大きいんだけどさ。(^^;

本書は、そんな私のために書かれたんぢゃないかと思えるぐらい、ドンピシャな内容だった。B/S, P/L の見るべき数字や、試算表の正体などが分かりやすく説明されてて、その上、税金を安くしたい人や銀行の借入を有利に進めたい人が、どんな決算書を作るかまで、素人が分かるように書かれているのだ。税金を下げるために使われる勘定科目、利益を上げるために使われる勘定科目がどのあたりかが分かるから、実際の財務諸表を見る時に大いに役立つのだ。

この本を読んでも、仕分けができるようになったり、決算書を作れるようになったりはしない。あくまでも出来上がった決算書を見る目を養う本だ。だけど、どうやらこれが大切なことらしい。簿記を学んで仕分けができる人はたくさんいるし、今時の決算書はコンピュータが作ってくれる。…が、できあがった決算書を実務に役立てられる人は経営者でも少ないのだそうな。健康診断でせっかく出てきたデータを見ても、病気を発見できないようなもんだし、ログを見てもシステムの問題を見つけられないようなもんでもある。まったくもって、もったいない話だ。

この本、表紙はとっても怪しい。カウボーイ風の著者の写真が、決算書の解説書とは思えない雰囲気を醸し出しているのだ。正直、買うかどうか迷った。(^^; が、最後まで読んでみたら、素人の私には丁度いいモノだった。もし、難しい会計理論を並べられていたら、会計の専門ではない私がすべてを覚えられるハズもないし、全ての勘定科目を解説されたとしても、どうせチンプンカンプンだったに違いない。今、もっとも興味のあるポイントが的確に書かれていた本書は、会計の素人が最初に読む本として、ベストチョイスかもしれない。分かりやすく軽妙な語り口も私好みだった。

数字を見るとおなかが痛くなる社長のための決算書の読み方 (アスカビジネス)

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