地球と一緒に頭も冷やせ!

「いや、ホント。頭を冷やした方がいいみたい。"地球なんざより、頭を冷やせ!" ぐらい言ってもいいかもしれない。」
気付けば、また "山形浩生" 氏の訳書だ。この方のアンテナは、ホント、敬服する。山形浩生氏の訳書なら売れる、みたいな傾向があるらしいけど、納得するしかない。この本も、絶妙な良書だ。

さて、本書。温暖化対策についての話だ。単なるアンチテーゼのアジテーションではないのだ。冷静にデータを見極め、足を地に着け、費用対効果の高い妥当な方策を検討し、ちゃんとした重み付けをしようぢゃないかとゆー話なのだ。

温暖化対策の目的は、CO2 を減らすことではないはず。CO2 削減は手段の一つでしょ? 実は温暖化対策すら真の目的ではないはずで、もし、温暖化によってパラダイスが訪れるなら、それは歓迎すべきことだよね? んぢゃ、我々にとって望ましい状況って、いったい何なの? …ってゆーあたりから、しっかりと考察している。

具体的には…。気温が上がることが原因で死者が少しばかり増える一方で、気温が低いことが原因で死亡する人は激減する。さてさて、温暖化は本当に悪なんだろうか? …ってな話だ。こんなのが、豊富なデータを基に、多数、展開される訳だ。

オープニングのホッキョクグマの話も、なかなか象徴的だ。いくつかの群れでホッキョクグマが減っているのは確かみたいだけど、実は全体としては増えているみたいだ。んでもって、減っているのは寒冷化しているところに棲んでいる群れだとのこと。これをもって、温暖化が原因でホッキョクグマが絶滅するなんて、ちょっとおかしな話だよね? さらにさらに…。寒冷化すらホッキョクグマ減少の原因ぢゃなくって、なんと、射殺しているから減っているのだそうな…。:-P いやはや、まったく、プロパガンダは当てにならないもんだなぁ…。この事例だけでも、温暖化って本当に諸悪の根源なの? って感じがする。

ちと、私の書き方が悪くて、温暖化が善だとゆー話に受け取られかねないのだけれど、そーゆー話ではないので、誤解なきよう…。恐怖に煽られ、冷静さを失い、闇雲に CO2 削減を盲信するのではなく、落ち着いて豊富なデータから現状を見極め、限られた予算を有効に使うために、まともな議論と優先順位付けを考えようってゆー提言なのだ。

よーわからんけど、とにかく CO2 は減らすことがいいことなんだよね? っと思っているとしたら、それは、とにもかくにも法を犯したら死刑! みたいな短絡的な暴論と同じなんだ。確かに CO2 を排出しないエネルギーの開発は大切だけど、それ以外にも大切なことはたくさんあるし、解決しなきゃならない緊急度の高い問題も少なくない。んでも、予算は限られている。すべての施策を実施することはできないのだから、どこから先に手を付けるべきかを、感情に流されずに正しく判断しなきゃならない。それはいったどこからなんだろう?

著者は統計学の専門家らしく、豊富なデータから、しっかりと提言しておられる。無知な私では、どのぐらい正しいのかは判断するのは難しいが、偉い人たちが時間と費用を使って考察するのに値する、十分な内容だと私は思う。

地球と一緒に頭も冷やせ!

地球と一緒に頭も冷やせ!

この本に、たった一つだけ難点があるとすれば…。内容が豊富過ぎて、本を読まない政治家や有権者に幅広く届かないだろうってこと。良書だけに、高い効果を期待したいのだけれど…。