象の背中

「勢いで映画まで観てしまったよ。:-)」
小説のカバーに映画のカットが使われているから、きっと映画化されたのだろうと思って、TSUTAYA へ立ち寄った。邦画のコーナーを探しても、なかなか見つからなかったのだが、ふっと耳を澄ますと、放送されている映画紹介で、ちょうど "象の背中" が取り上げられていた。早速、新作コーナーへゆくと…。発見。

映画は、ところどころ省略されているものの、およそ原作に忠実なストーリー。主人公、藤山幸弘を演じるのは、役所広司氏なのだが、これがとってもカッコ悪いのだ。…んが、これが当たり前だ。死を目前に控え、病気で衰弱し、心だって疲弊している。これがカッコいいはずがない。だけれども…。男の見栄と素直さと潔さ。そして、情けないぐらいの弱さが、逆に、なんかカッコいいのだ。男の死に際ってやつはこんなものなのかもしれない。

よくできた嫁に、聡明美人な愛人。素直な息子と健気な娘。絵に描いたような幸せ像が、ちと評判がよろしくない部分のようだけれども、けっこう、ありふれた大多数の人の生活ってこんなもんぢゃなかろうかと思ったりする。余命幾ばくもないわずか半年を切り取ったのだから、そんなに違和感はないと思うんだけどねぇ…。そりゃぁ、若い頃は喧嘩もしただろうし、病気になる前は職場で戦っていたかもしれない。そして、病気でなければダンス教室に通って、"シャル ウィー ダンス?" なんて言ってたかもしれないけれどね。:-P

映画は映画、小説は小説。表現方法や制約が大きく違うのだから、文句を言うのは筋違いな気もするが、それでもやっぱり、原作小説に描かれていた、お気に入りの箇所が映画で表現されてなかったことは残念に思う。序盤に登場する初恋の女性と、後日、かわす手紙のやり取りは、大人の事情を心得つつ、お互いの家庭と病状を気遣った、とても短い文面なのだが、その表現がとても柔らかく、読者の胸の中に何かを残すとても素敵なモノなのだ。このあたりが、サクッとカットされているのが、少々残念な気がする。

だけど、小説では表現できない風景や音、表情や色。それらは原作をよく表現できているし、感動のシーンはやっぱり目頭が熱くなる。

象の背中 スタンダード・エディション [DVD]

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もしかしたら、映画を観てから原作を読む方が臨場感があっていいのかもしれないなぁ…。

象の背中 - Tommy Heartbeat 2nd