君のためなら千回でも

「タイトルからまったく想像できないが、この物語の展開は秀逸。」
手元には原書 The Kite Runner がある。ずいぶん、昔、アフガニスタン小説Kite Runner – 全米が泣いた! | On Off and Beyond で紹介を読んで手にしたのだが、悲しいことに私の英語力では手に余ってしまい、途中まで読んだけど、ぜーんぜん話が分からないので、放置状態になっていた。んが、映画化されるとかなんとかで翻訳本があることを知り、amazon での配送を待てずに、本屋へ駆け込んで買ったのが「君のためなら千回でも」だ。

物語は、世界とか宇宙とかを取り扱った大きな話ではないし、アクションモノのような爽快なものでも、推理小説のような頭脳系でもない。アフガニスタンに生まれた一人の少年の贖罪の物語とでも言おうか。時代は現代だから、後半は日本人でも知っているタリバンも登場する。タリバンってなんだっけ? と云う向きには、"ワールドトレードセンター" も付け加えておく。

上巻は少し退屈かもしれない。主人公の少年期の話なんだが、召使いのある金持ちボンボンの甘えん坊の日常だし、子どもの生活なんて日本人に馴染みの薄いアフガニスタンでも大差はない。まあ、佐藤耕士氏の翻訳は抜群だし、著者であるカーレド・ホッセイニ氏の話の展開も秀逸だから大丈夫だとは思うけどね。

んで、下巻。政情不安定な祖国から、すべてを捨てて遠く離れたアメリカへ。んが、しかし…。人生は回っているのだ。再び祖国の地を訪れた大人になったアミールを待ち受ける数奇な運命。そして物語は感動の結末へ…。

まさか上巻がすべて伏線になるとは…。この展開は処女作だとは思えないほど素晴らしい。アメリカ発のプロパガンダ的なニュースだけでは分からないアフガニスタンの情勢も伝わって来るし、人として失ってはいけないものも描かれている気がする感動の名作。一通りストーリーを理解した今、改めて原著の方を読んでみたい。そー思った一冊 *1 だった。

君のためなら千回でも(上巻) (ハヤカワepi文庫)

君のためなら千回でも(上巻) (ハヤカワepi文庫)

君のためなら千回でも(下巻) (ハヤカワepi文庫)

君のためなら千回でも(下巻) (ハヤカワepi文庫)

文庫本の表紙の "上"、"下" の文字のところ、最初は「変な形だなぁ〜」と思ってしまったのだけど、読了後は表紙を観ただけで涙腺が…。

*1:二冊なんだけど、語呂が悪いから…。