クルーグマン教授の経済入門

「近所のお兄ちゃんみたいな語り口の翻訳がいい!」
経済と聞くと、何やら小難しい印象がある。偉い人の言うことは難しいし、本なんて難解単語の羅列だ。一方で、経済評論家は少しは分かりやすいことを言うのだけど、「子年は景気が上向きになる」みたいなことを言われてがっかりする。素直な心が希薄な私は、「評論家から占い師にでも転職すれば?」と毒づいてしまったり。:-P

さて、そんな経済の話だが、この本はぜんぜん違う。クルーグマン教授は有名人らしいのだが、その文体はまるで「近所のお兄ちゃん」って感じの口語で、とても学者さんとは思えないのだ。たぶん、周りに一人や二人いるはずだ。難しいことを、とーっても分かりやすい例で話してくれる、頭のいい人が。あんな感じ。翻訳の山形浩生氏のセンスがいいのは間違いないが、原文もそーゆーものなんだそうな。

それから、分かっていないことを分かっていないと書いてくれてるのも抜群にいい。テレビや新聞で「こーすれば景気が良くなる」「こーしなきゃダメになる」みたいな断言してる人が大勢いるけど、どーもよく納得できないことが多い。釈然としないまま、「まあ、偉い人が言ってるんだから、私の知らない知識や情報があって言ってるんだろう…。」と思って受け流す訳だが、この本では「これは実は分かってないことなんだ。」とか「学者の間でも意見が分かれているんだ。」としっかり書かれているのだ。これがうれしい。ちゃんと、事実は事実、学説は学説と分かれているのが、読んでいて気持ちがいいのだ。釈然としない気分だと、ページをめくる気力が薄れてゆくからね。世の中には、ちゃんと読者に届けることを目的とした経済の良書があったんだねぇ〜。

そーは言ってもテーマがテーマだけに、基礎的な知識のない私では、すべてを理解することは難しい。その点は認めるしかない事実だ。でも、経済がおもしろいと思えるようになった影響は大きい。専門家ぢゃない人が、短い時間でざっくり経済を把握するのに、なかなかいい本だと思う。自分たちが生活している現実社会の問題なんだから、興味があった方がいいもんね。

クルーグマン教授の経済入門 (日経ビジネス人文庫)

クルーグマン教授の経済入門 (日経ビジネス人文庫)