バベル

「天を目指した塔を建て、神の怒りに触れたのだ。」
バベルで思い出すのは、バベルの塔。だが、この映画に塔は関係ない。はてさて、塔を建て、神の怒りに触れた人々にはどんな天罰がくだされたんだっけかなぁ…。

…と云う訳で、予備知識として必要なのは天罰の方。すなわち "言葉の壁" だ。

ロッコアメリカ、メキシコ、日本のそれぞれで描かれる一本の糸で繋がった事件で、バベルを表現した意味深な本作。派手なアクションや分かりやすい結末は用意されていない。だから、観る人によって、それぞれ感想が異なるはずのこの映画。なんとも言えない余韻が残る。おもしろいとかおもしろくないとか…。そんな評価はこの映画に相応しくないだろう。

満たされることの無い飢餓にも似た孤独感。言葉では十分に表現できないソレを、人々は普段は誤摩化しながら生きている。が、追いつめられた状況にあって、心の奥底につなぎ止めておくことができるはずはなく、映画の中では、場面を変えながらそれぞれのソレを音楽とともに描き出し、観る者の心をえぐってゆく。これこそが天罰なのかもしれない。

人それぞれ、見えるモノが違う以上、言葉が通じても解決しない現実があるのだが、"言葉の壁" はスケープゴートにしやすいのだな。