善き人のためのソナタ

ベルリンの壁崩壊前の東ドイツ。ある劇作家の物語。」
劇作家の物語と言うべきか、シュタージ (国家保安省) 所属のある局員の物語と言うべきか…。まあ、いずれにしてもシリアスな映画で、誰にでも楽しめるエンターテイメント作品って訳にはいかない。ずっしりと重くのしかかる映画だ。

こーゆー時代、こーゆー国があったことは知っているものの、なかなか実感の湧かないのがホントのところなのだけど、映画に描かれた日常生活や登場人物の言葉は、私たちのそれと大きく違いはしないことが、けっこう意外だった。局員にしても市民にしても、もっと偏った思想や行動のイメージがあったのだけど、ゲシュタポの時代よりは現代に近く、ベルリンの壁崩壊直前だから、こんな感じなのかもしれない。

さて、映画の話。

劇作家であるドライマンは、とある事情で反体制の嫌疑をかけられ、ジュターシの局員であるヴィースラーの監視下に置かれる。盗聴器を通して聴いた'善き人のためのソナタ' のためか、あるいは美しき女優であり、ドライマンの恋人であるクリスタへの慕情からか、冷徹な局員なはずのヴィースラーは少しばかり意外な行動を取り、物語は終焉へと向かって進んでゆく。そして、ベルリンの壁が崩壊し、その後のヴィースラーとドライマンは…。

軽く調べてみたが、史実に基づいているのかどうかは分からなかった。…が、大げさではない話だからこそ、現実にこんな物語があったように思える。それがかえって、心の中にずっしりとのしかかるのだが…。

善き人のためのソナタ スタンダード・エディション [DVD]

善き人のためのソナタ スタンダード・エディション [DVD]

ついこの前まで、お役所直轄の特殊法人で仕事をしてたせいか、なんかみょーに日本と被るんだよなぁ〜、この映画。(^^; 日本も崩壊へ向けて進んでいるのかもしれない。