オール・ザ・キングスメン

「史実を基にした(?)社会派政治ドラマ。なかなか衝撃的な映画だ。」
タイトルを訳するとするならば、'王の家臣たち' ってところなんだろうか?

この映画をおもしろかったと表現するのは、ちとまずいような気もするのだが、もう一度、観たいと思った映画だった。史実に基づいた映画らしいので、現実にウィリーのような州知事がいたのだろう。正義のヒーローとして当選し、汚職から凶弾に倒れた州知事が。

派手なアクションや CG もなく、ミステリーでも SF でもない。パロディのような笑いもないし、ついでにエロもない。:-P 誰が観ても疑いのない完全な社会映画だ。だけど、演技派俳優のそろったこの映画には、最初から最後まで視線を釘付けにされてしまった。

ショーン・ペンの演じるウィリーの熱のこもった立候補演説は、映画なのに (英語なのに) すっかり聞き入ってしまった。なにか熱くたぎるものを思い起こさせる演説で、アメリカで選挙権を持っていれば、間違いなく投票していたであろうと思ってしまうほど、感情移入してしまった。弱いのだ。巨悪に立ち向かい、正しいことを主張し続ける熱い情熱に…。

民衆を味方に付け、めでたく州知事となったウィリーは、そこから汚職とスキャンダルにまみれてゆく…らしい…。観たにも関わらず "らしい" と煮え切らない表現をするのは、amazon の解説にはそんな感じのことが書いてあったものの、政治家に聖人君子であることを求めない私には、よく分からなかったから。:-)

少し横道にそれるが、私の価値観では、政治家に聖人君子であることを求めない。大切なのはファンクションとして機能するかどうかだ。特権を利用して、少しばかりおいしい思いをしたとしても、それは役得ってことで納得してしまう。インセンティブは必要なのだ。ただ、特権階級にいる特定の誰かのために役立つ結果としてではなく、より公平で正しい未来へ進むものに対してのインセンティブでなければならないが。もっとも、本当の正しさなんて分からないから、私の主観でしかないのだが…。その結果、民衆にとってより良い政治が行われるなら、お互いハッピーってもんだ。いくら身辺が綺麗でも、ファンクションとして機能しない政治家がなんの役に立つと言うのか?

閑話休題

で、映画の中でウィリーの素行で問題があるとするならば、おそらくは公費で踊り子を呼びつけていることと、圧力によって自分に有利なように世論を操作しようとしたところだろうか。高々、その程度だ。一方で、彼の行った政策は、裕福層よりも、中産階級貧困層を優遇するものである。資産家を敵に回して、だ。にも関わらず、世論が彼を糾弾する方向に動くのは、大衆が自分で自分の首を絞める行為にすら見えてしまう。メディアに踊らされる哀れな子羊たち。

最後は凶弾に倒れるウィリー。しかも、暗殺ではなく、'身内' に撃たれるのだ。どうやら、別の意思によって踊らされているような感じではあるが…。

ウィリーにしても、彼を撃ったヤツにしても、結局は、より巨大で狡猾なモノの手のひらで、踊らされていただけに過ぎないのかもしれない。真実は分からないが、あなたはどう観る?

http://www.so-net.ne.jp/movie/sonypictures/homevideo/allthekingsmen/