イビチャ・オシムのサッカー世界を読み解く

「日本代表におけるオシムサッカーを観たかった。」
日本代表に就任したオシム監督。2008 年ワールドカップに向けたオシムサッカーの世界を、かつて監督を務めたジェフの試合から紐解くことを試みた本書。

関西で生まれ育った私は、ジェフの試合を間近で見たことがなく、スポーツニュースのダイジェストで観るぐらいだ。しかし、丁寧なゲーム解説と、分かりやすい分析から、阿部がフリーキックを蹴り、巻がポストして、走り込んだ羽生がシュートを打つ…そんなシーンが、目の前で起こっているかのように頭の中で展開される。もちろん、他チームも対戦相手として登場するから、ジェフサポーターの著者の目を通した他のチームの戦いも、空想の中に描かれることになる。

サッカーはゴールにボールを蹴り入れる単純なスポーツで、ロナウジーニョやメッシ、クリスチャーノ・ロナウドのような足技の妙技を観るのが楽しいモノだが、見えないところ、見えにくいところで展開される戦術や駆け引きも豊富にあるスポーツである。そして、目で観るばかりでなく、頭で観ることで、面白さは何倍にも膨らんでゆくのだ。しかし、頭で観るには、観る側にも多少の訓練が求められる。実際にプレーして体感してみたり、本書のような解説本を読んでみたり…。

いろんなフットサルチームや子どものサッカー教室なんかに関わっていて思うのは、言葉で伝えられることなんて、ごく僅かしかないってことだ。適切なポジショニングや、その場その場の状況判断なんて、とても言葉で伝えきれるものではないし、また、頭ではなく、体が勝手に反応するようでなければ、実際のゲームでは役に立たないのだし。

オシム監督の機智に富んだ練習メニューは、伸び幅を最大限にする工夫されたもので、反復練習的なものとはずいぶん異なる。そんなオシムサッカーに触れられる、ジェフファンでなくとも楽しい一冊。