それでも僕はやってない

「冤罪? でも、明日は我が身かもしれない。」
とてもチンケな話である。たとえ有罪になっても、死刑や終身刑はありえないし、罰金も微々たるもの。密室殺人事件の謎も、アリバイトリックも、不可能犯罪でもなく、話題は "痴漢"。だけど、食い入るようにブラウン管の前から離れられなかったのが、この映画だ。:-)

取り扱っている犯罪は痴漢だけれども、この映画は法廷ゲームを楽しむエンターテイメント性もありながら、その実は、司法が抱える大きな問題をテーマにしているのだ。ホームズやコナン君は出てこないけど、観ておいて損はない。なぜなら、軽微な事件こそ、明日は我が身だからだ。

ほとんどの人が裁判所なんて縁がないと思っているはずで、実際、一般人が裁判所に足を運ぶことなんて、人生の中であるかないか…。おそらく、その程度のはず。…が、しかし…。裁判の結果がどうなるにせよ、裁判所に呼ばれれば、人生の一大事である。痴漢で有罪となれば、果たして今までと同じ道を歩めるかどうか…。そんな人生の岐路を一発勝負で切り抜けねばならないのだ。練習などない。民事なら相手も素人かもしれないが、刑事訴訟となれば、相手は百戦錬磨の検事である。そして、裁判官ですら敵であるかもしれない中で、人生を勝ち取らなければならないのだ。

裁判官が公平なものであると思っているなら、それは甘い。日本の裁判の有罪判決は 99% を超えるそうである。有罪か無罪かわからないから、裁判官に判断してもらう仕組みだとしたら、これはあまりにも高過ぎる数値だ。有罪だと確信しているから、裁判に訴えたのだと云うのがベースにあり、裁判になった時点で、推定無罪どころか、推定有罪と言っても差し支えないほどなのだ。だから、何かの冤罪に巻き込まれたとして、「それでも僕はやってない」と訴えたとしても、裁判になったとしたら無罪を勝ち取ることはかなり難しいと言える。実態は "狂った裁判官" などを参考にされたい。

http://d.hatena.ne.jp/Tommy1/20070925

それでもボクはやってない スタンダード・エディション [DVD]

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「それでも僕はやってない!」

冤罪でも、これを言い続けるだけの精神力と、財力がある人は、ごく少数だと思われる。慌てることなく、事前知識を身に付けておきたいところだ。そんな訳で、教養的側面を持った、エンターテイメント作品として、お勧め。