トヨタの闇

「語られることのないトヨタの闇を白日にさらした貴重な一冊。」
超優良企業のようなイメージのあるトヨタの裏を綴った本書は、けっこう衝撃的な内容だと思った。しかし、amazon での書評を読んでみると、どちらかと言えばトヨタ擁護的だったので、冷静に考えてみると…。

ある程度、労働者が不遇を強いられているのは、どこにでもある話。本書に取り上げられている過労死の問題など、同情心を煽るような取り上げ方になっているものの、大問題と言うほど件数が多い訳ではなさそうだ。死んでは元も子もないにも関わらず、トヨタのレールに乗ることを選択した本人の問題のように思われ、"トヨタの闇" として、多くのページ数を割くに値する内容とは思えない。

もちろん、亡くなられたことは悲しいできごとであり、本書を読む限り、トヨタは十分な補償をすべきことのように思える。が、過労死やフィリピンのストリップなどの扱いが、やや大きすぎるため、本来の本書の価値に到達しなかった印象となってしまった。

ゴシップぎみの話題よりも気になるのは、情報隠蔽の方だ。トヨタに隠蔽する意思はないのかもしれないが、トヨタが動かすお金が、あまりにも巨額であるために、例えば、広告収入に頼るメディアがマイナス面をほとんど報道できないか、報道してもオブラートに包まれたものとなってしまっていたり、労働組合が機能していなかったり、リコールの実態が企業イメージと大きくかけ離れていたり…。

不当に貶める必要はないものの、事実は事実として隠蔽されるべきではないはず。真実を覆い隠してしまうほどの過度なブランドイメージは、我々消費者にとってかなり危険な事態をもたらし、それがトヨタの没落の引き金になるかもしれない。お互いにとってプラスになるように、事実は事実として日の本に晒されるべきだろう?

闇がトヨタのすべてではないが、貶めるためのデマでもない。真実の一面として、多くの人が知るべきトヨタの側面。いろんなトヨタを見た上で、トヨタの車を買う、株を買う、取引する、トヨタで働く、ことを選択しようぢゃないか。

トヨタの闇

トヨタの闇

リコールにかかる費用や、労働問題にかかる費用は、かなりの金額になってるはずだが、こーゆー事後費用を事前費用に回すことができれば、大きな信頼とともに、膨大な利益をもたらすように思えるのだけど…。理想論でしかないのかなぁ…などと思いながら、本書を読み終えた。