嫌老社会

「すごいタイトルだ。老人を嫌う社会だもんなぁ…。」
世の中には自分がその立場になってみないと分からないことがたくさんある。"現代の貧困―ワーキングプア/ホームレス/生活保護 (ちくま新書)" なんかもそうだったが、「知らないことには見えない」のだ。人間の脳は興味の無いことはスルーするようにできているから、しょーがないことではあるのだが…。

しかし、この本はすべての人に平等に訪れる老い話を取り扱っている。貧困に関しては、縁がない可能性が高くとも、老いは生きてる限り訪れるものだ。無視する訳にはゆかない。

まだ、老いまでには時間がある立場である私には気付けなかった事だが、世の中は "嫌老" なのだな。姨捨山の話もそうだけど、定年退職で社会の流れから外され、介護だの、年金だの、認知症だの…と、老いは生産性に寄与しないネガティブ要素ばかりが目につく。お年寄りには席をゆずりましょう、感謝しましょう、と綺麗事を並べ、"老人" ではなく "高齢者" と呼ばれるようになったけれども、社会のマイナス要素としてとらえられている点は何も変わっていないのだ。

…これにはまったく気付かなかった…。

そもそも、高齢者を一律に扱うことの不当さを本書は指摘する。生まれた時は 2,000g 程度のしかなかった差だが、貧富の差、健康の差、経験値の差は、年を重ねる毎に大きく開いてゆくのだ。その認識から始まり、「老いない、老いさせない社会」への転換までを提案する本書。

社会を変えるのは時間のかかることだから、若い人たちにこそ本書を読んでもらいたいのだが、超高齢化社会を目前に控えている今、事態は急を要するとする。すると、ターゲットは 40 代あたりの人たちだろうか。

齢を重ねた叡智を後世にしっかりと引継ぐような、効率的社会であって欲しいものだが、それには高齢者の大きな意識改革が必要なんだろうなぁ…。生涯現役。そんな人が増えて欲しいけど、既得権益にしがみついて、次世代を邪魔する人には引退してもらいたいな、と。:-P