狂った裁判官

「中の人の話は実に興味深いものがある。」
サスペンスを思い起こさせるようなタイトルの本書だが、書かれているのはフィクションではない。三権分立として独立した機関であり、法令に基づいて独立した意思決定 (すなわち判決) を求められる裁判官。しかし実態は、自己保身やサービス業化、前例主義で間違いを犯し続けていると著者は訴えるのだ。

法律家と言えば、難しい日本語をこねくり回すイメージがあるが、教科書のような分かりやすい丁寧な文章で、裁判官の意思決定の狂いを表現した本書。あまり一般になじみのない司法世界ではあるが、要するに一般人と同じように、人事評価は怖いし、楽はしたいし、評判を気にするのだと云うことだ。閻魔大王の如く、揺るがない強い意志を持って、鉈を振るう訳ではない。そりゃぁ、それなりに狂いもするわなぁ…と云うことになる。

けして他人事ではない。いつ原告や被告、あるいは被告人として呼び出されるやもしれぬ。裁判所に行くことなんて、多くの人にとって、人生の中でそう何度もあることではないと思うが、もし、行くことになったとしたら、それは人生に大きく影響を与える一大事のはずだ。その時に、法令に基づいた正しい判決が行われるとは限らないのだ。期待を裏切られ、心理的ダメージを受けるよりも、本書から予備知識を得ておいた方が、やりようがあろうと思われる。

狂った裁判官 (幻冬舎新書)

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最後の章は、2009 年から始まる裁判員制度について書かれている。国民の 8 割がやりたくないと言う裁判員なのに、施行されるこの法律。本当に民意と言えるのかと著者は問う。いつか回ってくるであろう裁判員。覚悟はいかが?

# 映画はおもしろいんだけどねぇ…。

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