プロマネはなぜチームを壊すのか

プロマネはなぜチームを壊すのか 知っておきたいプロジェクトのヒューマンスキル

プロマネはなぜチームを壊すのか 知っておきたいプロジェクトのヒューマンスキル

刺激的な煽りタイトルに魅かれて手にした本書。んが、タイトルは釣り。副題の "知っておきたいプロジェクトのヒューマンスキル" が本書の内容をよく表している。まあ、ヒューマンスキルが不足しているから、チームが壊れるのだと云う解釈は成り立つが、本書を読むと、どうやら著者は人格者のようなので、世の中に対して批判的な思考はしないように見受けられる。常に建設的な思考で物事をすすめる好感度の高い人物に違いない。

プロマネと云うのは実にハードな仕事である。直接的に何かを生産する訳でもなく、個人の能力や成果はほとんど目に見えない。プロマネのスキルはなくとも、見せ方 (ハッタリと言いたいぐらいだ) がうまいだけで評価が高い人もいれば、逆に推進力は高く開発メンバーからの人望は高いのに、見せ方が下手で上司や客先の評価が低い人もいる。チームの動かし方も千差万別で、精神論、根性論、人徳、技術リーダー、方法論、工学的アプローチなどなど、正解がなく、誰がやるかで大きく変わってくる。

そんな中で、本書はヒューマンスキルに焦点を当てている訳だが、もしかしたら理想のプロマネスキルとはこーゆーものなのかもしれない。ヒューマンスキルだけで物事がうまく進むわけではないが、チームメンバーの生産効率を長期間に渡って高く保つことは、プロマネとして優先順位が高い要素の一つだからだ。

最後の方にケーススタディがあるのだが、おそらく感情に流されることさえなければ、およそ理想的な振る舞いができる人はけっこういるのではないかと思われる。プロマネにかかる雑多なプレッシャーが、判断を誤らせたり、理想的な振る舞いができない状態に追い込んだりすることが多いことを思うと、セルフコントロールについての記述があれば、さらに良いモノに、テキストとして使えるようなモノに仕上がったかもしれない。最も難しいことは、他人を動かすことよりも、自分をコントロールすることではないかと思うからだ。

プロマネだって弱い一人の人間。プロマネにだけ理想像を求めるのはコクというもの。プロマネにも救いの手を。:-)