分析について

「原因究明ってのはとっても難しいことだな。」

勉強会で聞いてきた話はとてもおもしろいものばかりだったんだけど、ヒューマンエラーの分析の話題をとっかかりにすることに。

ヒューマンエラーの分類ってことで、スリップ (slip)、ミステイク (mistake)、ラプス (lapse) ってのが有名だそうな。スリップは、誤操作、誤読。ミステイクが判断ミス。ラプスがど忘れ。情報処理過程からの分類ってことなんで、時系列に並べるとミステイク、ラプス、スリップとなりそう。…と解釈したんだけど、まあ、話のとっかかりなので、正しいかどうかは気にしない。

勉強会で少し遊んでみた。「しゃべりながら運転していると、よく道を間違えるんですけど、それってラプス?」みたいな。「寝る前に携帯の電池切れに気付いて、充電を仕掛けておくと、次の日、持って出るのを忘れたりするのはラプス?」「いやいや、そもそも寝る前に充電するところで判断をミスしてるんで、ミステイクかも…?」てな感じで思考実験するのが楽しい。*1

"原因"とは、「ある物事や状態を引き起こしたもと」と辞書に書いてあるんだけど、いくらでもさかのぼれてしまう。そもそも携帯を買わなければ忘れることも無いとか、そもそも売られてなければとか、そもそも人類が誕生したのがこの問題の原因で…ってのは考えるだけ無駄なんだけれども、どのぐらいまでさかのぼるのが正しいのかと云うのは、なかなか難しい問題だ。上記の携帯電話を忘れる話は、分析的には前日の行動までさかのぼったりはしないんだろうけど、現実の対策を考えるとそうでもない。会社に充電器を持って行くためにカバンに入れておくべきだった…と云うのは、十分に検討に値するものだと思うし。

システム開発仕事をしていると、障害管理と呼ぶ仕事がある。漢字で書くと固いイメージがあるけれど、バグトラッキングと呼べば、カッコいい響きになる。やたら横文字が横行しているのが気に入らない部分もあるんだけれど…。まあ、バグ票のこと。たいていの場合、原因を記入する項目があって、マークを付けられるようになってたりするんだけど、「あの日は徹夜明けで頭がボーっとしてたからねぇ…」「バレンタインでもらったチョコが本命なのかどうか気になって集中できなくて…」「目の前の女の子の胸元が気になっちゃって…」なんてのを書く欄はない。だいたい「仕様、コーディング、運用」に類する分類が多い。もっと細かいのを作ってるところもあるんだけど…。

分析する立場にいる人は、いろいろなことを考えて原因の選択肢を用意しているのだと思う。だけど、今まで見てきた中では二つ問題があった。一つは選択肢の網羅性と排他性。いくつも該当しそうなものがあったり、どれにも該当しなさそうなのがあったりして、マークするのがなかなか難しいものが多い。障害分析を研究してる人が作ってるんぢゃなくって、上司に言われて形式だけ整えてるんだろうな…きっと。形式だけ整ってればチェック機構が働かない *2 ことがほとんどだから…。もう一つは、それを記入する人の判断。記入者全員が同じ精度のフィルターを持ってる訳ぢゃないから、何を記入するか分からないのだ。コーディングミスと思えることでも「仕様書の表現だとこういう解釈もありえるから、原因は仕様にある。」などと云う判断は当然あるだろうし、みんながみんな論理的ぢゃないから、「よく分からないんで直感でマークしました。」なんて人もいるのだ。

えーっと、何が言いたくて、書き始めたんだっけ? (^^;

物事を分析するにあたって分析項目の妥当性は難しいと云う話と、回答する側の認識の差は無視できない誤差を生むはず…と云う話かな。

そうすると、世の中にあるアンケートを基にした分析結果ってのは、信用できるものはそんなに多くない気がしてくる。世帯別の年収がいくらかとか、血液型の分布みたいな、網羅性、排他性が完全で、普通に考えれば判断を誤らないものについては、非協力的な人や悪意のある人がいることを考慮しても 90% 以上の信用度があると考えて良さそうだ。でも、障害原因なんかは検討に値する精度の分析結果を手に入れることは、並大抵のことではなさそう。イコール、きっと現状はデタラメばっかりに違いないと思っているんだけど…。(^^;

しかし、問題を解決するのに、いつも完璧なデータや完璧な分析が必要な訳ぢゃあない。例えば、協調フィルタリング (amazon で、「この本を買った人は、こんな本も買ってます」って出てくるアレ) なんかは、趣味指向に関する徹底分析なんてことは無視して、「あの人も買ってるけど、あなたもいるでしょ?」などと、とてもいい加減な根拠に基づいていて、それで売り上げを伸ばしている。何度、ひっかかって、ポチっとしてしまったことか…。(TT) ヒューマンエラーでもソフトウェアの障害でも一緒なんだけれども、結果的に減少なり撲滅なり…をできる方法が見つかるのなら、少々、いい加減な分析でもいいぢゃん。…ってな考え方もある。完全を求めて膨大な時間とコストをかけるより、そこそこ満足できるものを安価で短時間に見つけられるなら、それはそれで有効だろうと云うもの。

IT 業界を鳥瞰*3してみた時、はたしてどうだろう…? うまく説明できない、とっても個人的な直感なんだけれども、方向を間違えていると思っている。似非科学のジレンマとでも云うんだろうか? 天動説を信じて、いろんなパラダイムを構築しているような、そんな感覚を持ってて、後でゼーンブひっくり返されそうな気がするのだ。まあ、電子がマイナスからプラスに流れているのが明確になっても、電流はプラスからマイナスに流れる前提で構築された理論をそのまま使うことにした…みたいなことになるかもしれないけれど、まあ、いたずらに問題を複雑にしていると考えている。

偉そうなことを言うからには、なんか答えを用意しているんだろうな!! と言われると少し困ってしまうのだが、「最初に偉そうなことを言ってしまって、どうしよう…と焦りながらなんとか乗り切ってゆく方法も、けっこう有効ですよ。」そんなアドバイスを受けて、こんな話を書いてみた次第。

未踏の成果がその答えだ! …えーっと訂正。その答えの第一歩だ! (^^;

公開日まで、あと 33 日。(TT)

*1:SEA 関西プロセス分科会の勉強会ってこんな雰囲気。気軽に参加できそうでしょ? 私がレベルを下げてる気もするけれど…。汗

*2:誤字脱字とか本質的でないことはチェックされるんだけどね。:-P

*3:鳥は鳥でも、鶏かダチョウなら、空からみることはできないんだけどね。笑