聖夜

「クリスマスのできごと。」

「早く寝ないとお化けがでるよ!」「いい子にしてないとサンタさんからおもちゃをもらえないよ。」みたいなのは好きではないので、うちではお化けもサンタもいないことになっている。ただし、サンタの方はいないとは断言していない。見たことがないと言ってあるだけだ。なのに、なぜかサンタの存在は確信しているようだが…。

子どもにいろいろ訊いてみた。なぜ、欲しいものを知ってるの? なぜ、家を知ってるの? などなど。そうやって、話のつじつまが合わなくなった時点で、サンタが架空のものだと云うことに自分で気づくんぢゃないかと思ったのだが、さすがに、就学前の幼児には早すぎた。サンタ星に住んでて、ズームができる地図で家々を覗いているのだそうな。「まるで、カーナビみたい…」と突っ込むと、それを見ながらソリに乗ってやってくることに発展してしまった…。

プレゼントはどこで手に入れるのかと訊いたら、トイザらスで買ってくると答えていた。最初はね。でも、いろいろつっこむと、いつの間にかサンタが任天堂の工場で働いてることに変わってしまい、しかも盗んでくることになってしまった…。なんのためにそこまでして、プレゼントを届けるのだろう…。

話は少しさかのぼって、クリスマスの 1 週間ほど前。いよいよクリスマスが近づいてきて、寝る前に嫁が子どもに訊いたところによると、「クリスマスには何もいらない。お父さん、お母さんが長生きしますようにってお願いするの。そうだ。お父さんの心拍計をお願いしとこうかな。」なんとまあ殊勝なことだろう。ちょっと目頭が…。

もともと子どもが欲しかったのは、トイザらス限定の NINTENDO DS ゴールドなんだが、殊勝な心がけに免じて買ってやろうぢゃないか! と、嫁が電話をかけまくる。やっと見つけた遠くのトイザらスまで、朝っぱらから車を飛ばして、最後の一個だったゴールドモデルを買ってきた。その夜、子どもの口から直接聞こうと思って、「クリスマスプレゼント、何が欲しい?」と尋ねると、やっぱりゴールド DS だった。「あれ? いらんって聞いたんやけど?」「そんなん、言ってへんよぉぉ!!!」だそうな。夕べの感動は何処へやら…。

さて、クリスマスイブ。嫁の提案で、プレゼントは隠しておくことになった。「トイレを見ろ!」「机の裏を見ろ!」みたいなメッセージをつないでいって、最後にプレゼントが手に入るようにしておいたのだ。もちろんメッセージの差出人はサンタ。嫁は枕元にビデオカメラを置いておき、子どもの姿を録画する準備は万全。朝になると、特になんのハプニングもなく、メッセージ通りに進んで行って、ゴールド DS を手に入れた息子。朝っぱらから、とびきりうれしそうな笑顔を見るのは、まあ、悪くない。

だけどさぁ…。コナンを自称するなら、気づいてくれよぉ…。朝っぱらからビデオカメラを片手にニコニコしている母の準備の良さ。まるで、君の行動を予め知っていたみたいに見えないかい?

…こうしてまた一つ、彼の中でサンタの存在が確かなものになってしまった…。

その後、私のパソコン作業を覗きに来た息子が大きな声で、「あれ! この写真、サンタさんからのメールの写真と一緒や!」と言うのには驚いた。ぜんぜん違う写真を使ったんだが…。「そんなはずないよ。この写真は使ってないよ。」とわざとヒントを出してみる。「ぜったいこれや! お母さん、これやんなぁ。」と嫁に同意を求める息子。…まだまだコナン君には遠いみたいだね。