圧力

「またしても風呂場で実験。」

うーむ。すっかり風呂が実験場と化してしまった。子供と一緒に風呂に入ると、「今日はどんな実験するの?」とプレッシャーをかけられてしまう。彼はマジックが好きで、簡単なカードマジックなんかを見せると、とびきりの笑顔で喜ぶのだが、風呂場の実験も似たようなものらしい。ま、子供にはマジックも科学も同じようなものなんだろう、きっと。

「ハイ、タオルを持ってきたよ。」と、どうやら今日はタオルを使って実験しろと云うことらしい。急にネタを振られてもこちらにも都合があるのだが…。まったく困ったもんだ。ひとしきりタオルを濡らしたり、絞ったり、回してみたりとしばらく遊んでみたのだが、なーんにも思いつかない。うーむ…。

しばらくして思い出したのが、"毛細管現象" と "サイフォンの原理"。できるかどうか分からないが、挑戦して見ることにした。

桶を二つ用意し、片方にお湯を汲む。お湯を汲んだ方は湯船の縁に置き、空の桶は床に置く。そして、濡らしたタオルの片方の端をお湯の入った桶に浸し、もう片方は垂らして空の桶に入るようにしておく。これで様子を窺っていると…。少しずつではあるけれど、ポタポタと下の桶にお湯が溜まってゆく。上の桶の方も徐々に水位が下がってゆく。どうやら、うまくいったようだ。

なんせスピードが遅いので、あまり変化が目立たず、普通にやっていたのでは子供には退屈だ。子供が現象を認識するまで観察させるためには、少しばかり話術が必要だったけれども、なんとか子供を喜ばすことはできた。父親の威厳は保てたんではなかろうか?

明日も何かを期待されるだろう。うーむ、プレッシャーである。とりあえず、ストローを持ち込んでおけば、もっと分かりやすく "サイフォンの原理" を見せられるだろうし、"ベルヌーイの定理" も見せられる。それが済んだら…しばらく一緒に風呂に入らないように気を付けることにする。