記録

「逆の立場だとどう思うんだ?」
システム開発では、ある程度の規模の会社だと、だいたい議事録を取ることが普通のようだ。中には会話を録音したりすることところもあるようだ。

例えば家を建てるとしよう。その時に、会話を録されたらどうだろうか? 議事録を取られたらどうだろう? まあ、記録されることはそんなに問題ではないかもしれないけれども、いざ、家ができてから、その記録を持ってこられたら? 完成した家のデキについて、「この部分は xx月xx日に言われた通り…」といつでも説明できるって寸法だ。建築デザインをやっている人ならともかく、素人にとってはこんなことされたらたまらんぞ。もし、それに嫌悪感を感じる心があるのなら、システム開発においても、そういう使い方はできないってことだ。「顧客満足」なんてのを掲げているならね。

経験上、システム開発における議事録が有効だった試しはない。かなり時間の無駄なので、他の有効な手段を採用すべきだと思っているのだが、どこへ行っても議事録、議事録と、半ば常識と化している。途中から参入して、「これまでのやりとりはすべて議事録にとってありますから読んだおいてください。」なんて言われた日には、「ああ、失敗プロジェクトかも…」と思ってしまう。

結局、議事録は整理前の情報であり、会議に参加した人たちの興味の順で会話が進んでいっているのであって、全体像を理解しやすいようにはなっていないし、何が確定していて、何が確定していないのかは議事録からは分からないのだ。時間の経過の中で何度も変化していたら、混乱するのは必死だし、知識の浅い段階で書かれたデタラメな情報も混在していたりする。読むだけ時間の無駄だと思うのだが…。

議事録は、当事者が情報を分析、整理する目的で使うものだと心得るべきだ。たとえ承認印があったとしても、後から証拠としての価値はない (裁判したら勝つかもしれないけれど、前述の通り、そんな使い方はできないのだ)。会議に参加していない人に、仕様として見せるものでもない。「こんな話をしたよ。」と云う簡単な報告ぐらいなら使えるかもしれないけれど。

裁判記録なんかは、裁判長が話す順番をコントロールするし、すべて決定、未決定を明確にするし、1 回あたりの裁判の話題が絞られているから、記録としての有用度合いが違う。システム開発で、捏造疑惑 (だって、都合のいいように要約してるでしょ?) も付きまとう怪しい議事録とは訳が違うのだよ。