兼務

「まいったなぁ…。まあ、予想してたけどさ。」
そこそこの規模のシステム開発に関わっている。そんな中で、自分が受け持っているサブシステムが他のサブシステムと比べて好調に進んでいるのだが、恐れていたことが起こってしまった。とうとう他のサブシステムを兼務すすることになってしまったのだ。

管理する立場に立って考えてみれば、そういう采配をしたくなる気持ちは分かる。だけどシステム開発においては、残念ながらその判断は間違っている。収入につながる場合は別だけど、収入は変わらないままで仕事が増えて喜ぶ人間などいるはずがないからだ*1

仕事を早く片付けた方が損をする状況を作ってしまうと、被害者はもちろん、周りにも影響する。しかも長期的に。誰も早く仕事を片付けるための工夫をしなくなるし、それは組織の習慣になってしまうから、未来の仕事まで遅くすることになるのだ。もちろん、仕事を遅くしてるように見えるようなヘマは誰もしない。立派な報告書を書くのがうまくなったり、遅延理由を説明するのがうまくなったり、そういうスキルが伸びてゆくから。

仕事を早く片付けたら損をするような状態を作ると、全体の仕事が遅くなる。誰も認めないかもしれないけれども、たぶん真実だ。最低でも、今の仕事がいっぱいいっぱいに見えるところまでは遅くなる。大抵の場合は、明らかに遅延していくのだけれど…。逆に言えば、早く片付けたらメリットがあるような状態を作れば、早く片付くのである。それは分かっているけれども給与査定は微々たるものだし、人事権もないし、経費も使えないから、そんな事は不可能だと思うなかれ。どうしようもないと諦めたら、そこで終わりだ。

他にも触れるものはいくつかある。その中でも効果の高そうなものは、仕事のトレードオフだ。

人それぞれ、仕事の好みが違うし、得意分野も違うし、仕事毎に効率も違う。私など、体裁を整えた報告書なんて類のものが苦手なのだけれども、いろいろややこしいことを考えたり、分析したりするのは好きだ。こういうギャップをうまく利用する訳だ。今、受け持っている仕事の中でも、あまりやりたくない報告書仕事がけっこうある。そう云う部分を他の人に振って、兼務させたい仕事と交換するのだ。信じられないかもしれないが、1 時間で終わる報告書と 3 日かかるパズル的な仕事なら、3 日かかるパズル的な仕事の方を取るのだ。まあ、パズル的な仕事が苦手な人は 3 日かかっても、得意な人なら 1 日で終わったりするのだけれど。

後はお互いが納得すれば*2、例え結果的に仕事量が増えたとしても、それまでの生産効率を落とさずに仕事を継続することができるのだ。綺麗に言えば「仕事を細分化して、適材適所に割り当てる」ってことになるのかな。

「あなたはこのサブシステムの担当で、こういう役割だから、こういう義務を果たさなければいけない。」などと云うような、誰の責任だの、誰の義務だのって考え方に捕らわれないで、どうやったら問題を解決できるか? を注力すれば、他にもいろいろとアイデアは出てくると思うのだ。

*1:ま、ある特殊な状況でそういうこともあるのだけれど、ここでは無視する。

*2:形式的に納得することではなく、心が納得しなければならない。