それはアジャイルの問題なのかな? -3-

話題はこれ。乗り遅れた感があるけれども…。 (^^;

アジャイルがダメだと思う7つの理由 - arclamp

アジャイルとしての反論はこちらをご覧頂くとして…。
アジャイルがそんなにダメだと思わない7つの理由 - haradakiro's blog

私としては、そもそもアジャイルがどうこうって前に…と思ったので、別の視点を提供してみる。七つも反論する文章力がない…と書きながら 3 つ目の、"3.コーチって何だよ" についても思うところを。

コーチはチームの持つ解決能力を引き出すために存在する?何を言っているんだね。成果を生み出さない人員なんか不要なんだよ。

"成果を生み出さない人員なんか不要" には大いに賛成する。

ところで、成果とはなんだろう? 誰にとっての成果だろう? 得をするのは誰で、損をするのは誰だろう?

これは利害関係の対立する二者間で起こる歪みや無駄をどう解消するのか? ってゆー問題だと私は認識している。原告は被告を犯人だと言うが被告は無罪だと主張する。奥さんは「旦那は家事に非協力的で飲んだくれて浮気をしているから離婚して慰謝料をよこせ!」と言い、旦那は「誰のお陰で飯を食えてると思ってるんだ? 遊びほうけてて部屋は散らかり放題。家に帰っても安らぎがなく、慰謝料なんて払うつもりはない!」と反論する。こーゆーのって当事者間ではなかなか解決しない問題で、裁判官なり調停委員なり…という第三者の介入で解決するのが現代社会な訳だけれども…。

受託開発で考えた時、発注元とベンダーってのは利害関係が対立する関係にある。お金を払う側と貰う側。システムを作る側と使う側。この二者間での歪みや無駄はけっこういろいろあるんぢゃないかな?

とにかく検収してもらいたいベンダーは、価値あるシステムを提供することよりも、検収条件を満たすことに邁進する。契約だからトーゼンだ。使えないドキュメントを量産したり、検査よりも検査報告書の方に力を注いだりする。本当は設計に問題を抱えているのだけど、検収条件的には問題ないので報告しないのも、契約だからトーゼンだ。技術的な挑戦に暴走し、後には誰も保守できない残骸を残して去って行った…なんてのもありそうな話だ。ベンダーに生産性が低いと指摘すれば、生産性が低くないことを証明するために労力を使うだろう…生産性を上げるためぢゃなく…ね。

情報の非対称性ってゆー問題もある。設計の善し悪し、コードの善し悪しは、ベンダー側にしか分からない。「良いコードです。」「良い設計です。」「高い生産性を発揮してます。」って言いたいだろうし、言い続けるだろう。問題が表面化するまでは…ね。そして問題が表面化した頃には取り返しのつかない負債を背負ってしまっているかもしれない。ベンダーに悪意があるように読めるかもしれないが、そーではない。ベンダーは良い設計で良いコードで良いシステムを提供したいに決まっている。だけど、これは受託開発とゆー契約モデルが内包するシステム的な問題なんだ。茹でガエルの法則。いつの間にか気付いたら…ってゆーことになるのがパターンなんだと思う。

こーゆー歪みや無駄によって損失を被るのは発注側なんぢゃないかな? 利害の対立関係にない第三者がいろんなメソッドを駆使して軌道修正を行うことでメリットを享受するのは発注側なんぢゃないかな? それは成果と看做してもいいんぢゃないだろうか?

成果に貢献しているというならチームメンバーにお金を払うから、彼らからコーチにフィーを支払ってもらえばいい。

そーゆー考え方もアリだとは思うんだけど、でも、たぶん、機能しない。パワーバランスが悪いから。チームからフィーを貰うという構造だと、行動のベクトルはチームの利害と連動してしまうだろう。

また、利害関係の対立する二者間で起こる歪みや無駄は、双方に発生する。そして圧倒的に発注側が強者である状況で、ベンダー側にいくらテコ入れしても、できることは限られている。発注側に取り入ることのできないアジャイルコーチ (スクラムマスターと同義でいいんだよね?) のなんと無力なことか…。今も苦労 (苦悩) してる人たちがたくさんいるに違いない。(^^;

発注側が強者である状況であるが故に止められない最大の問題は "理不尽な要求" だろう。パワハラ (下請けイジメ) 的なマインドで故意にやっている場合もあるだろうが、理不尽であることに気付けていない場合も少なくない。もうね、これはね、どーしよーもない。ベンダーの下請けマインド (作業者の奴隷根性とでも言うか…) と、発注側の権力の暴走は、一度、力関係ができてしまうと、二度と変わらない。負のループは最後まで続く。どっちが悪いかではなくって、そーゆーシステムになってる。二者間で解決することは無理なんだ。もし、アジャイルコーチがこの状況を打破できるとしたら、その価値はとても大きいんぢゃないかな? 理不尽な要求によって発注側が自ら損害を被ってしまうことを防止できるとするならば。

アジャイルがダメでもいいよ。でも、"利害関係の対立する二者間で起こるいろんな歪みや無駄" をなんとかできる存在がいるとするならば、そこには価値があると思うよ。…ってことだけは伝えておきたい。

ただし…。現実問題としてそーゆースーパーマンは市場にどれだけいるのかなぁ…ってのはある。開発費以外の費用を捻出させられて、発注側からもベンダーからも信頼され続け、 Win-Win の関係を維持し続けるコウモリのような存在。ロールモデルとしては必要だと思うんだけど、現実はいろいろ厳しいんぢゃないかなぁ? (^^;