統計数字を疑う

「数字の本当の読み方は、この本で。:-)」
表紙に「なぜ実感とズレるのか?」とある通り、とっかかりは、交通事故の死亡者数、平均貯蓄高、平均寿命といった一般的な数字が、いまいち日常の感覚に合わないとゆー話から始まり、経済効果や GDP といった経済絡みの話へ進み、最後は地下経済まで話は及ぶ。たった 740 円の薄手の本なのに、なかなか密度は濃い。数字に踊らされないために、そして、数字が意味する本当の姿を見極めるために、読んでおきたい一冊。

  • 第一章 : 「平均」に秘められた謎
  • 第二章 : 通説を疑う
  • 第三章 : 経済効果を疑う
  • 第四章 : もう統計にだまされない
  • 第五章 : 公式統計に表れない地下経済

世の中に出回っている数字は、実はそのまま真に受けてはいけないことが多い。が、誰かが膨大なデータに基づいて算出した数字であることは間違いないのだから、どうやって算出されたかを知ることによって、その数字が意味する本当のことが見えてくるのだ。それを知っているかどうかで、数字の見方はがらりと変わる。

例えば、"まえがき" に書かれている交通事故死亡者数の減少の話。これは、交通事故死亡者数の定義によるのだ。警察定義は 事故後 24 時間での死亡を交通事故死亡者と定義しているが、これだと医療技術の進歩で、事故被害者を 24 時間以上、生かすことができるようになれば、死亡者数が減ることになる。車の安全性が向上したことで死亡者数が減ったような印象を持っている人が多いだろうけど、必ずしもそうとは言えない訳だ。

数字は一人歩きするから、立場によって、この数字はいろんな使われ方をするだろう。年々、生徒数が減ってゆくであろう教習所では、年々、合格ラインが厳しくなっているから死亡者数が減っていることにして、カリキュラムを増やすことができるかもしれない。自動車保険なら、人身事故よりも物損事故に重点を置いたセールスができるかもしれない。生命保険なら…。

どんな定義で数字が求められたのか? 誰がどんな意思を持って数字を使っているのか? このあたりの "本当の数字の読み方" を知っているかどうかで、見える世界がずいぶん違う。数字を使った風評に流されず、そして、数字の表す裏側を見極めるために、この一冊は必ず役に立つ。間違いない。

統計数字を疑う なぜ実感とズレるのか? (光文社新書)

統計数字を疑う なぜ実感とズレるのか? (光文社新書)