医療の限界

医療の限界 (新潮新書)

医療の限界 (新潮新書)

タイトルは "医療" とあるが、医学会の内部告発本ではなく、社会全体としての医療の本。「お客様 (患者様) は神様です。」では、望ましい医療はけして受けられない。そればかりではなく、崩壊に向かっているのだ、と云う話。

  • 金を払うヤツが偉い、では解決しない
  • 医療は常に危険を伴う
  • 人は死ぬのだ、と云う現実を受入れるべし

最初の方は、おおよそこんな話だが、そこからとっても盛りだくさん。司法ネタあり、医師教育の話あり、他国の取り組みの話が出てきて、最後は「厚労省に望むこと」で締めている。

軽く読むにはなかなか重いし、話題が広範囲に渡るのだが、本当の意味で望ましい医療のあり方を考えると、ここまで語らなければならないことがよく分かる。著者は建前ぢゃなくって、本気で望ましい医療と云うものを考えてらっしゃる。医療崩壊の警告を鳴らしつつ、医学を超えた社会学としての医療を語った著者の功績には、尊敬の念を抱かずにはいられない。

けして、医療だけの話ではなく、社会のあり方として、他にも適用できる話だと思うが、ひとまずは医療問題としてでも、多くの人に読んでもらいたい一冊である。