「世界征服」は可能か?

「世界征服」は可能か? (ちくまプリマー新書)

「世界征服」は可能か? (ちくまプリマー新書)

世界征服を企む悪の秘密結社の運営資金はいったいいくらだろうか? その資金はどっから捻出しているのだろうか? そんなことを考えたことはあるだろうか? 世間のヒーローモノに登場する悪役は、高度な科学力を持っていたりすることが多いが、その科学力を一般社会のビジネスに活かした方が、少ない労力で、効率よく金を稼げそうなものである。

しかし、悪の秘密結社の目的は金を稼ぐことだけではない。そこには悪の論理、美学がある。これから悪の組織を作ろうとするならば、そこんところをしっかりと押さえなければならない。では、現代の悪とはいったいなんなのか? 巨大組織を運営する労力に値するだけの価値が、世界征服にはあるのか?

そんなことをユーモアを交えつつも、いい大人が真面目に語るのが実に面白い。読み始めると、最後まで一気に読み進んでしまった。

分類としては、昔読んだ "ウルトラマン研究序説 (扶桑社文庫)" なんかに近いが、もっと軽い。ウルトラマン…の方は、「朝起きたら、家の前に怪獣の死体があったら、どこに電話すればいいか?」なんてことを、現代の法律に適合して解説したりする、かなり真面目な本だった、そこまで真面目ではない。その匙加減がちょうどいい。

ヒーローは聖人君子、純潔を求められて窮屈だ。やっぱ、ヒールが自由奔放でかっこいい。そんなヒールを集めた悪の組織を結成したいと思ったら、行動する前に本書を読むべし。