ザ・ファシリテーター2

ザ・ファシリテーター2―理屈じゃ、誰も動かない!

ザ・ファシリテーター2―理屈じゃ、誰も動かない!

ここ数年、"ファシリテーション" と云う単語を耳に、目にするようになって気になってはいたのだが、「理屈じゃ、誰も動かない! 」の煽り文句に惹かれて、とうとう手にしたのが本書。

残念ながら、世の中は理屈通りには進まない。明らかに失敗するのが分かっているのに、方向を変えられないシステム開発の現場で苦悩の日々を送って来た立場としては、そのことは嫌と云うほど分かっている。んが、しかし、論理的な根拠を示す以外に手持ちのカードがなかった。状況はこうなっている。だから、こうするしかないんですよ、と。しかし、このやり方でうまく行くのは、自分が実質的にチームを動かす権力や影響力を握っている時だけだった。より影響力の強い人 (年齢が上とか、地位が大きく上だとか) がいたり、利害関係者が増えたり、規模が大きくなったりすると、効果はどんどん薄れてゆく。理屈だけで動かせる範囲はそんなに大きくないのだ。

この本のシリーズ 1 を読んでないため、ファシリーテーションで使うツールを詳しくは知らないが、危機的状況に置かれた会社を大きく舵取りするこの物語を読むと、その効果の大きさはとても良く分かる。もちろん物語だから話半分と考えるとしても、物語の中で採られた方法論は試してみたくなるだけの説得力がある。

正しいと信じた方向に進めたいなら、正しいと唱えるだけではダメ。それなりのやり方があると云うことを、改めて認識させてくれた。しかも、精神論ではなく、具体的な方法論としてだ。

「正しい事をしたければ偉くなれ。」とは、踊る大捜査線に登場するいかりや長介氏の名言だが、偉くない立場で正しい事をするために、本書は一読の価値がある。