★★★★☆ '仄暗い水の底から'

「めずらしく、ホラー小説を読んだ。」

本棚にあったそれに気付いたのは、ただの偶然だったのだろうか? 今にして思えば、何か得体の知れない闇の力に導かれて、本棚に向かってしまったのかもしれない。本を手に取ったものの、不気味な表紙を見て、書いてあるであろうことを想像してしまい、読むことに躊躇していた。本能的に危険を感じて、頭の中で警笛が鳴っているような、そんな感覚に襲われるも、なぜか本棚に返すことができない。ページを開くと、そこには…。

…とホラー調でせまってみた。:-)

'リング' で有名な鈴木光司氏の著書。幽霊とか化け物は登場しないが、人間が本能的に感じる恐怖を内側から沸き立たせるような、そんな小説だ。短編集で、一つ一つは短時間で読み終える。まあ、あんまり後味がいいものではないな。ホラーだし。

プロローグとエピローグにつながる最後の話を読んで、ホラー小説なのに少しばかり涙してしまった。小さな子どもを持つ父親なら、きっと同じように感じるだろう。少しばかり力をもらったような、そんな不思議な読み心地のホラー小説だ。

仄暗い水の底から (角川ホラー文庫)

仄暗い水の底から (角川ホラー文庫)