宇宙

「宇宙では地球上の常識は通用しないんだよなぁ…。」

ソフトウェアの世界ってのは、宇宙空間みたいなものかもしれない。宇宙では重力も空気抵抗もないから、地球上の物理制約は通用しない。地球上では、投げたボールはいずれ落ちるけれども、宇宙ではわざわざ止めてやらなければ、どこまでも移動してゆく。ソフトウェアの世界は論理世界だから、宇宙空間よりもさらに制約は緩い。わざわざ明確にしてやらないといけないこともたくさんある。

例えば…。「この書類は誰でも閲覧可能」とあった時、現実世界では暗黙のうちに、書類を保管している施設に入れる人、施設を知っている人、同じ会社の人、日本語を読める人などの制約があるし、書類が 1 枚しかなければ、同時に閲覧できる人は一人しかいない (ま、数人で一緒に見ることもあるけれど…)。他の人に見せたくなければ、自分の机の中に隠してしまうこともできる。

ソフトウェアを作る場合は、「このデータは誰でも閲覧可能」となると、インターネット上に公開することを意味する可能性もあるから、"誰でも" が誰を指すのかを厳密にする必要に迫られる。書類のように机に隠す技も使えないから、そういう機能が必要なら、わざわざ作らなければならない。

「そんなもん常識やろ!」は宇宙では通用しないのだ。空気や温度も慎重に制御しなければならない宇宙生活のように、ソフトウェアの要求も常識でごまかさずに慎重に丁寧に明らかにしてゆかなければならない。

そんなことを移動中の新幹線の中で考えていた。