教訓

「裸の王様は深い。」

「バカには見えない糸で服を作る」と言う仕立て屋に騙され、できあがった "バカには見えない服" を着て町を闊歩し、町の子供に「なんで王様は裸なの?」と言われて恥をかく。これが有名な "裸の王様" のあらすじ。なかなか示唆に富んだ話なんだけれども、IT 業界にマッピングしてみる。

  • 見栄。自分がバカだと思われたくないために、ありもしない糸が見えるフリをしたのがそもそもの始まり。見栄は身を滅ぼすのだ。

開発方法論や、オブジェクト指向についていけないのを隠して、あたかも知っているかのような言動と批評で、間違った自分のやり方を無理やり正当化して、プロジェクトをあらぬ方向へ引っ張っていったりする。見栄はプロジェクトを暴走へ導くきっかけなのかもしれない。

  • 過信、妄信。材料費を浮かせてボロ儲けしようとしている仕立て屋をあっさり信じるところが甘すぎる。そもそも、"バカには見えない服" にどれだけの存在価値があるのか、その費用対効果を評価するのが王様たるものの務めだろう。服を着る目的は、紫外線や寒さからの防御、たるんだおなかの隠蔽、権威の象徴などが考えられる。これって見えてこその価値のはずだ。

そりゃぁ、ツールベンダーは開発効率が劇的に向上するとか、決定的なソリューションだとか言うわさ。めちゃめちゃマシンスペックが高いマシンでないと使い物になりませんとか、習得するのに 10 年はかかります、なんてわざわざ言うわけがない。開発方法論だって同じ。自分のプロジェクトに必要なものは自分で要件定義をちゃんとしないといけないのだ。

  • 権威。部下が指摘してくれないのは、部下の見栄もあるだろうけど、強烈な圧力があって王様に逆らえないからでもある。職を失うかもしれないとか、殺されるかもしれないとかね。権威を持つと云うことは、自浄作用を失うことでもあるのだ。

開発チーム内で、自分の知らない問題が誰からも出てこないようになったら、それはかなりの危険信号だ。強力な人事考査権限に恐れおのおいているか、あるいは言っても無駄だと思われているかのどちらかだ。いずれにせよ、問題は深海へと潜ってしまい、最後の局面まで表面化しない。裸の王様がパレードまで裸だと気付かなかったのと同じように。

そう言えば、「なんで Tommy さんとはいつも揉めるんですかねぇ…。他の人は何も言わないんですけど…。」と訊かれたんだけれども、その答えは、オイラが宮殿で遊んでいる子供だからさ。「王様、なんで裸なの? ねぇ、ねぇ? なんで? (名探偵コナン風に)」ってな感じだ。他の人は従順な家臣なのさ。パレードで赤っ恥をかくまで付き合ってくれるさ、きっと。

矛盾。確か、バカな家臣や臣民を発見することを目的として、"バカには見えない服" を作らせたはずだ。でも、先に見えないものを見えると偽った自分がいるのだ。それがバレていないのだから、もし他の人が "とっても素敵ですね" と嘘をついても、自分は見破ることはできないと考えられる。逆に嘘を見破れるのなら、自分の嘘も見破られると考えられるのだから、見栄を張ってもしょーがない。こーゆー矛盾に気付かないと、逆転裁判でエンディングを迎えることは難しいぞ。

開発中の矛盾は例を挙げたらいくらでも出てくる。スケジューリングあたりの話をすれば、あっとゆー間にボロが出るし…。そもそも、言ってることが日替わりだったりするしね。

うーむ、「裸の王様」はなかなか示唆に富んだ物語だ。いろんなリスクをひとまとめにして、「裸の王様リスク」とでも名づけようか?*1

*1:ずいぶん、書き直したんだけど、それでも毒を吐いてるなぁ…。日本語もへんだ。また、書き直すかも…。