分割

「小さくて正確なものを積み重ねるのが吉。」
子供の頃、よく親に頼まれて買い物に行った。買うものと数量を書いた買い物リストとお金を預かり、嫌々ながらも買い物に出かける。ついでにおやつを買う誘惑に負けそうになりながらも、無事に買い物を済ませて帰宅する。家に帰ると、荷物とレシートとお釣りを親に渡して、親はレシートと買い物リストと照らし合わせて、細かく確認する。お釣りまできっちり確認するから、小銭をちょろまかすこともできやしない。チェッ! と毒づいて、図書館へ出かけて勉学に勤しむ少年時代であった…。

少し大きくなると、料理を手伝わされることもあった。そうは言っても、小さな子供のことだから、できることは限られている。野菜を洗うだけとか、ゆで卵を切るだけとか、単純なことだけだ。スパゲッティやらカレーやらシチューやらを作っているはずなんだけれども、手伝っている間は何が出来上がるかは分からなかったなぁ…。

カレーやらシチューやらを最初から最後まで作らせるのは、子供にとってはなかなか難しい。買い物とかゆで卵作りだとか、仕事を小さく切り出してやれば、子供でも手伝えるようになる。

鋭い人は何を言おうとしているのかバレテしまったかもしれないが、基本設計だの、詳細設計だの、大きい単位で仕事を任せるのはなかなか難しいから、もっと小さい範囲に分割して、正確な仕事を積み重ねていこうではないかと云う話だ。そもそも、難しいかどうかは年齢で決まるのではない。知識と技術と経験に依存する問題だ。当然、子供には知識、技術、経験が乏しいから、大抵のことは難題となる。だけど、それを「子供だから」と云う理由に結び付けてしまうと、本質を見落とす。ビーフストロガノフを作れない大人はいくらでもいるのだ。

対象が広くなればなるほど知識、技術、経験は必要になる。逆に言えば、必要な知識、技術、経験を少なく済ませようと思ったら、対象を絞り込めばいいことになる。

価格競争に突入しつつある IT 業界では、交渉によって値段を下げることが中心になっているが、要求水準は高度化傾向にあるのだから、そんなことをやっていては、「動かないコンピュータ」の記事を増やすばかりだろう。価格を下げるために、労働の単純化と云う工夫が必要だと思うのだが…。