暗号技術入門

「いや〜、暗号はおもしろいわ。」
暗号だけでなく、デジタル署名や乱数の話まで、暗号周辺技術を網羅している本書。"現代の暗号が手に取るようにわかる!!" の帯に偽りなし。いつもながら、難しい話を分かりやすく、理路整然と綴る結城浩氏の文書表現力が素晴らしい。書店で手に取ってみて、その分厚さに躊躇してしまったが、買って良かった。難しい話が苦手な私が、スラスラと読めてしまった。曖昧だった概念を改めて整理できたし、運用にも実装にも役立つし、とってもお買い得な一冊だ。

しかしまあ、人前で読むのはちょっと恥ずかしい本かもしれない。"暗号" から思い浮かべる一般的なモノと言えば、スパイや、推理小説、戦争映画などなど、ちょっと怪しい雰囲気が漂うぢゃない? だから、もしかしたら、「この人、裏の世界の住人?」などと思われちゃうんぢゃないか? …と。(^^; 杞憂かな?

コンピュータで取り扱う暗号周辺技術は、怪しい計画を秘密裏に話し合うためのものではない。もちろん、そーゆー用途にも使えるけれど :-P、ファイルの作成者が間違いなく自分であることや、ファイルの内容が改竄されていないことを保証するといった、一般社会で判子や割印が果たしている役割をコンピュータの世界で果たすことができる技術でもあるのだ。

なので、この本は一般の人にこそ読んでもらいたい。暗号技術をどう使うのか? どこまで信用できるのか? そのあたりが広く認知されることを願っている。だって、せっかくデジタル署名したファイルを送っても、相手に理解されてないために、印刷して判子を押さなきゃならないってのは、あまりにも悲し過ぎるから。(^^;

昔から暗号技術に興味があって、メールソフトに PGP プラグインを組み込んであったりするのだが、ほとんど使ったことがなかったりする。(^^; 遊びで友だちと何通かやり取りしたことを除けば、たった一度、仕事で活用した *1 だけ。そんな状況だから、公開鍵をどっかに置いてたけど、あんまりにも使わないので、管理も杜撰になってしまってるし…。(--;

新版暗号技術入門 秘密の国のアリス

新版暗号技術入門 秘密の国のアリス

*1:忘れかけてたけど、一度だけ、特許に絡む開発仕事 (とあるソフトの動作中のメモリを解析して、ほにゃほにゃする仕事) の内容をやり取りするのに使ったことを思い出す。