限定

「"しかない" を疑え!」

10 以下の自然数で二桁のものは 10 "しかない" のは真である。5 個買ってきたケーキを 4 個食べたら、残りは 1 個 "しかない" のも真であるし、Mac に付属のマウスにはボタンが 1 つ "しかない" のも、今のところ真である。

しかし、納期に間に合わせるために、残業や休日出勤でひたすらコードを書き続ける "しかない" のは、はたして真だろうか? 顧客の依頼は呑む "しかない" のだろうか? 上司の指示には従う "しかない" のだろうか?

実は、"しかない" には言葉通りに限定を意味する場合と、ある言葉の省略形として使われる場合とがある。

  • しか "思いつかない" ない
  • しか "知ら" ない
  • しか "考えたく" ない
  • しか "やったことが" ない
  • しか "やりたく" ない
  • しか "言いたく" ない

こんな言葉が省略されているのだ。人の思考は言葉に左右されやすいから、迂闊に "しかない" と表現してしまうと、省略形だとは気付かずに、思考が停止してしまう。自分が話す時は、できるだけ "しかない" を使わないように心がけた方がいいし、誰かが "しかない" と言った時は、本当に "しかない" のかどうかを疑った方がいい。