感覚
「やっぱ、使いやすい方がいいでしょ?」
私は、もともと X68000 ユーザーだった。継続機種が開発されなくなり、時代は PC/AT 互換機へと向かっていったのだけれど、私は Macinsoth へと流れていった。…まあ、仕事が仕事だから、PC/AT 互換機も遜色ないぐらい使うんだけどね。
Mac と云えば、洗練されたデザインと云うイメージが一般的かもしれないけれど、"For the rest of us."*1と云うコピーで登場した Mac は、使いやすさこそがその本質だと思う。
ところが、この使いやすさってやつはなかなか他人には伝わらない*2。まあ、カレーを食べたことのない人にカレー味を説明するのが不可能なのと同じで、体験するしかない訳だけれども、当時は、「なぜ、使いやすいのか?」「使いやすいとはいったい何なのか?」をいろいろと考えたものだ。当時、読んだ本はこんな感じ。
- Human Interface Guidelines:The Apple Desktop Interface(日本語版)
- 誰のためのデザイン?―認知科学者のデザイン原論
- ヒューメイン・インタフェース―人に優しいシステムへの新たな指針
Apple が出しているのは、もちろん Mac 標準を広く伝えて、Mac 標準に合わせて開発してもらうためだけれど、難しいことは書いてないし、今でも知識として役立つ話なので、読んでみても損はしない。上に挙げた中では一番容易な内容だし。まあ、でも、どれか一冊読むとすれば、「誰のためのデザイン」かなぁ…。
おかげですっかり詳しくなって、自称 "ユーザーインターフェースの専門家" になったものの、開発の現場ではまったく役に立たない。未だにメインフレームのために方眼紙を使って画面設計*3をしていた時代と変わらない醜悪な設計をしなければならない。自分が受け持つのはホンの一部で、やはり全体の統一感は重要なので、私が受け持つところだけ洗練されたものを作る訳にはいかない。これには時々つらくなる。機能のある/なしでしか評価しないから、使いにくくて使われなくなってゆく機能があったりするのだけれど、誰も気付かない…。経済的には問題ないんだろうけど、使われない機能を開発すると云うのは、開発者としての誇りと云う点で、釈然としないものが残ってしまうし、合理的な判断としても「だったら、作らなきゃいいのに…」って考えてしまう。
まあ、そんな時代が過去のものとなることを願う私としては、今回のような記事をバンバン取り上げて欲しいなぁ…と思っている。